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福岡高等裁判所 平成11年(ネ)633号 判決

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人は、被控訴人に対し、金一一万二四四四円を支払え。

2  被控訴人のその余の各請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審を通じ、被控訴人の各負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人の各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審を通じ、いずれも被控訴人の各負担とする。

第二事案の概要

事案の概要は、以下のとおり付加訂正するほか、原判決事実及び理由中の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二頁末行目の次に以下のとおり加える。

「 本件は、訴外日建工業株式会社(以下「日建工業」という。)に対し、執行力のある公正証書(以下「本件公正証書」という。)を有している被控訴人が、同公正証書に基づき、日建工業の控訴人に対する手形金請求債権を差し押さえ、これにより、控訴人に対し、取立権を行使して、その支払を求めている事案である。」

二  同三頁一行目の前に「一 争いのない事実等」を加え、三行目の「一 争いのない事実等」を削除する。

三  同三頁四行目の「訴外日建工業株式会社(以下「日建工業」という。)」を「日建工業」と、五行目の「執行力のある」を「本件」とそれぞれ改める。

四  同三頁一三行目の「次のとおり債権を有していた。」を、「左の各約束手形金債権を有していたところ、以下のAないしC各債権につきいずれも平成七年九月二九日(福岡地方裁判所平成七年(手ワ)第六八号、第七二号、第八二号各約束手形金請求事件。なお、以下における各事件番号の表示は、特に断らない限り福岡地方裁判所におけるものであるから、「福岡地方裁判所」の表示を省略する。)、同じくD債権につき平成九年一〇月一四日(平成九年(手ワ)第五二号約束手形金請求事件)、それぞれ手形判決を得た。」と改める。

五  同六頁一一行目から七頁一三行目までを次のとおり改める。

「3 AないしC各債権についての経過

(一)  控訴人は、平成七年一〇月三日、AないしC各債権に係る各手形判決に対しいずれも異議の申立てをなし、各強制執行停止決定を得た((手ワ)第六八号事件につき、平成七年(モ)第四九三七号事件・保証金二二七〇万円、(手ワ)第七二号事件につき、同年(モ)第四九三六号事件・保証金六七五万円、(手ワ)第八二号事件につき、同年(モ)第四九三八号事件・保証金三三八万円、以上保証金合計三二八三万円。)(乙一及び八ないし一〇)。

(二)  日建工業は、AないしC各債権に係る各手形判決に基づき、債務者を控訴人、第三債務者を遠賀信用金庫、請求債権を、A債権につき元金一億〇〇八五万五〇〇〇円及びこれに対する平成七年七月一日から同年一〇月二日まで年六分の割合による損害金(利息)一五五万八四一六円の合計一億〇二四一万三四一六円、B債権につき元金三〇〇〇万円及びこれに対する同年七月一日から同年一〇月二日まで年六分の割合による損害金(利息)四六万三五六一円の合計三〇四六万三五六一円、C債権につき元金一五〇〇万円及びこれに対する同年八月一日から同年一〇月二日まで年六分の割合による損害金(利息)一五万五三四一円の合計一五一五万五三四一円並びに執行費用一万五八五〇円の総合計一億四八〇四万八一六八円、被差押債権を、債務者(控訴人)がAないしC各債権に係る各約束手形の不渡処分を免れるため第三債務者(遠賀信用金庫)の加盟する銀行協会に提供させる目的で第三債務者に預託した一億四五八五万五〇〇〇円の預託金返還請求権とする債権差押え及び転付命令を申し立て(平成七年(ル)第二四一六号、同年(ヲ)第三一五六号事件)、同年一〇月四日その発令を得て(以下、右転付命令を「本件命令」という。)、同命令は、同月六日第三債務者である遠賀信用金庫に、同月九日債務者である控訴人にそれぞれ送達された(乙五、一一及び二三)。

(三)  控訴人は、平成七年一〇月九日、本件命令に対し執行抗告の申立てをしたところ(福岡高等裁判所平成七年(ラ)第一八七号事件)、これについては、民事執行法(以下「法」という。)一五九条六項により裁判が留保された(乙一二、一三及び弁論の全趣旨)。

(四)  被控訴人は、本件公正証書に基づき、債務者を日建工業、第三債務者を遠賀信用金庫、請求債権を二億四二四一万一五四九円(内訳は、元金一億六七六〇万円、平成九年一月二〇日から同年六月二〇日までの年一五パーセントの割合による利息一〇四六万九二六〇円、同月二一日から平成一〇年九月三〇日までの年三〇パーセントの割合による損害金六四三三万〇八四九円、執行手続費用一万一四四〇円)、被差押債権を、本件命令の被転付債権とされた控訴人の遠賀信用金庫に対する預託金返還請求権のうち右請求金額に充つるまでとする債権差押命令を申し立て(平成一〇年(ル)第三三五三号事件)、同年一〇月九日その発令を得て、同命令は、同月一三日第三債務者である遠賀信用金庫に、同月二二日債務者である日建工業に、それぞれ送達された(甲一及び七)。

(五)  被控訴人は、本件公正証書に基づき、合計二億四二四一万一五四九円を請求債権、日建工業を債務者、控訴人を第三債務者、AないしC各債権を被差押債権として債権執行を申し立て(平成一〇年(ル)第三七四四号事件)、これに基づいて平成一〇年一一月五日発せられた債権差押命令(以下「本件差押え1」という。)は、同月七日に控訴人に、同月一八日に日建工業にそれぞれ送達された(甲五及び乙一)。

(六)  ところで、前記2及び3(一)に掲記した各手形判決に係る異議事件(平成七年(ワ)第三三二三ないし第三三二五号、平成九年(ワ)第三八二八号各約束手形金請求本訴事件、同年(ワ)第一八一七号不当利得金等返還請求反訴事件)について、平成一〇年一二月八日判決が言い渡されたところ、それぞれの認容額は、A及びB各債権につき控訴人による相殺の抗弁を容れた結果、A債権につき九七一二万〇七七三円、B債権につき二八八八万九二三〇円、C債権につき一五〇〇万円(ただし、以上はいずれも元金。)とされ(右各認容額自体については争いがない。)、これに伴い、前記(一)掲記の各強制執行停止決定も取り消され、右判決は確定した(乙一及び弁論の全趣旨)。

(七)  控訴人は、平成一〇年一二月二八日、前記(三)掲記の執行抗告の申立てを取り下げた(乙一三)。」

六  同七頁一四行目の「6 日建工業は、」を「(八) 日建工業は、前記(六)の判決における、」と改める。

七  同七頁一四行目、末行目及び同八頁二行目の各「うち元金」をいずれも「残元金」と改める。

八  同八頁四行目の「被告が」の次に「前記(一)掲記の各」を、五行目の「取戻請求権」の次に「の一部」をそれぞれ加え、同行目の「担保」を「保証」と改め、六行目の「福岡地方裁判所」を削除する。

九  同八頁一〇行目の「された」の次に「(乙二及び六)」を加える。

一〇  同八頁一一行目から九頁七行目までを次のとおり改める。

「(九) 被控訴人は、平成一一年一月一三日、遠賀信用金庫から、前記(二)掲記の被差押債権である預託金返還請求権に相当する一億四五八五万五〇〇〇円を受領し、これを、AないしC各債権の残元金に充当した上で、さらに、残額をA債権残元金に対する利息の一部に充当した(甲一八。ただし、被控訴人が遠賀信用金庫から右金員を受領したこと自体は、争いがない。)。

(一〇) 被控訴人は、平成一一年一月一四日、前記(四)掲記の平成一〇年(ル)第三三五三号債権差押命令申立事件及び遠賀信用金庫に対し提起していた債権取立請求事件(平成一〇年(ワ)第四四六一号事件)をいずれも取り下げた(甲二二、二三)。

(一一) 本件差押転付命令1は平成一一年一月二〇日確定したところ、これに基づき、日建工業は、同月二一日、第三債務者である国から三七三三万一一一〇円(うち一一一〇円は供託金利息)を受領した(ただし、これは、後記4(三)におけるD債権に係る本件差押転付命令2の分も含むものである(乙三、五及び六)。)。」

一一  同九頁八行目の「7 更に、日建工業は、」を「(一二) さらに、日建工業は、前記(六)の判決における、」と、同行目の「うち元金」を「残元金」とそれぞれ改める。

一二  同九頁一一行目の「訴外」、一二行目の「(以下「訴外金庫という。)」及び一四行目の「福岡地方裁判所」をいずれも削除し、一二行目の「第三債務者、」の次に「D債権に係る」を加える。

一三  同一〇頁一行目末尾から二行目の「訴外金庫」を「遠賀信用金庫」と改め、同行目の「送達された」の次に「(乙四及び七)」を加える。

一四  同一〇頁三行目から八行目までを次のとおり改める。

「4 D債権についての経過

(一)  控訴人は、D債権に係る手形判決に対し異議の申立てをなし、平成九年一〇月一七日、強制執行停止決定を得た(平成九年(モ)第一五九五号事件・保証金四五〇万円)(乙一、六及び一四)。

(二)  右手形判決に係る異議事件(平成七年(ワ)第三三二三ないし第三三二五号、平成九年(ワ)第三八二八号各約束手形金請求本訴事件、同年(ワ)第一八一七号不当利得金等返還請求反訴事件)については、前記3(六)で認定したとおり平成一〇年一二月八日判決が言い渡されたところ、同判決においてD債権全額が認可され、これに伴い前記4(一)で認定した強制執行停止決定も取り消され、もって、右判決は確定した(乙一及び弁論の全趣旨)。

(三)  その後間もないころ、日建工業は、前記(一)のD債権に係る手形判決に基づき、債務者を控訴人、第三債務者を国、請求債権をD債権の元金二〇〇〇万円及びこれに対する平成九年九月二日から平成一〇年一二月一〇日まで年六分の割合による損害金一五二万八七六七円の合計二一五二万八七六七円、被差押債権を前記3(一)で認定した平成七年(モ)第四九三七号事件の保証として供託された供託金取戻請求権二二七〇万円のうち右請求金額に充つるまでとする債権差押え及び転付命令の申立てをなし(平成一〇年(ル)第四二七四号、同年(ヲ)第二八六三号事件)、平成一〇年一二月一四日その発令を得て(以下「本件差押転付命令2」という。)、同命令は、同月一六日第三債務者である国に、同月一八日債務者である控訴人に、それぞれ送達された(乙三及び六)。

(四)  被控訴人は、本件公正証書に基づき、前記3(五)で認定したのと同様に、D債権を被差押債権として債権執行を申し立て(平成一〇年(ル)第四三八五号事件)、これに基づいて平成一〇年一二月二二日発せられた債権差押命令(以下「本件差押え2」という。)は、同月二五日第三債務者である控訴人に、平成一一年一月一六日債務者である日建工業に、それぞれ送達された。

(五)  本件差押転付命令2は、平成一〇年一二月二六日確定したところ、これに基づき、日建工業は、前記3(二)のとおり、平成一一年一月二一日、第三債務者である国から、AないしC各債権分と合わせた三七三三万一一一〇円を受領した(乙五及び六)。

(六)  被控訴人は、債務者を控訴人、第三債務者を遠賀信用金庫、被保全権利を本件差押え2に基づくD債権に対する取立請求権(元金のみ)、被仮差押債権を前記3(一二)に掲記したD債権に係る異議申立預託金返還請求権とする債権仮差押えの申立て(平成一一年(ヨ)第五一号)をなし、平成一一年一月二六日同決定を得て、同決定は、同月二七日第三債務者である遠賀信用金庫に送達された(甲一五及び一六)。

(七)  一方、本件差押転付命令3も平成一一年一月二三日第三債務者である遠賀信用金庫に送達されたため、同信用金庫は、同年二月一二日、右異議申立預託金返還請求権の全額に相当する二〇〇〇万円を、差押え競合により供託した(乙七)。」

一五  同一〇頁九行目の「8」を「5」と、一〇行目の「AないしC債権」を「AないしC各債権」と、同行目の「右5の返済を受けた」を「前記3(九)掲記の金員を受領した」と、一三行目ないし一四行目の「平成一一年一月三一日」を「同月三一日」とそれぞれ改める。

一六  同一一頁二行目から八行目までを次のとおり改める。

「1 本件差押え1の効力

本件差押1の被差押債権であるAないしC各債権は、本件差押え1がなされるより前の本件命令による日建工業への転付によって消滅したといえるか。

2 本件差押え2の効力

本件差押え2の被差押債権であるD債権は、本件差押え2がなされるより前の本件差押転付命令2による日建工業への転付によって消滅したといえるか。」

第三争点に対する判断

当裁判所は、本件各請求は、これらのうち合計一一万二四四四円の支払を求める限度で理由があるが、その余はいずれも理由がないから棄却すべきものと考えるが、その理由は以下のとおりである。

一   争点1について

1  甲を債権者、乙を債務者、丙を第三債務者とする転付命令が発付された後に、丁を債権者、甲を債務者、乙を第三債務者として、右転付命令の請求債権が差し押さえられたとき(以下この差押えを「請求債権差押え」という。)には、転付命令の第三債務者に対する送達が、請求債権差押えの第三債務者に対する送達より先にされた場合には、転付命令が請求債権差押えに優先すると解するのが相当である。なぜならば、法一五九条五項、一六〇条によれば、転付命令は、それが確定したときに、第三債務者に対する送達時に遡及して効力を生じる旨定められているところ、その趣旨は、転付命令に不服申立を認める一方、転付命令の効力発生時期を明確にして、転付命令の実効性を確保するとともに、第三者との関係を調整することにあるから、その第三者には、被転付債権の他の債権者のみならず、請求債権差押えの債権者をも含むものと解されるからである。被控訴人は、法一四五条一項により、債権差押えは、第三債務者の債務者に対する弁済を禁止し、民法四八一条は、一項で支払の差止を受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は第三債務者に対して一定の範囲で更に弁済をすることを請求することができ、また、二項で第三債務者はその債権者に対して求償できるものと規定しているところ、弁済にしても転付命令にしても債務者の第三債務者に対する債権を消滅させる行為であるから、請求債権差押えがされた以上、確定前の転付命令は無効である旨主張する。しかし、この主張は、右の転付命令の効力発生時期に関する法の規定の趣旨と相容れないばかりでなく、請求債権差押えの第三債務者乙が任意に行う弁済と執行裁判所の関与によって一方的に債権譲渡の効力が生じる転付命令とを同一に考え、転付命令の場合でも二重払いの危険を一方的に右乙に負担させ、乙がそれを免れるためには、請求債権差押えの送達を受けると、同差押えを受けたことを理由に自らが転付命令に対する執行抗告を申し立てなければならないことになるが、乙にそのような義務を想定することは困難である(なお、被控訴人は、同差押えの債権者である丁に転付命令を受けている旨を連絡し、同人が執行抗告をすることが可能である旨主張するが、そのような事実上の可能性をもって転付命令の効力を論じるのは相当ではない。)こと、他方、丁は、甲が転付命令で取得した被転付債権(乙の丙に対する債権)を甲の一般財産として執行することは可能であることなどを考慮すると採用できない。

右の前提に立ち検討するに、前記第二、一3(一)ないし(三)及び(五)ないし(七)で認定したところによれば、本件命令は、平成七年一〇月六日に、本件差押え1は同年一一月七日にそれぞれ第三債務者に送達されたが、本件命令は、同年一〇月三日の各強制執行停止決定及び同月九日に控訴人がなした執行抗告の申立てによりその効力が停止されていたが、前記第二、一3(六)で認定した判決において右各強制執行停止決定が取り消され、また、控訴人において平成一〇年一二月二八日右執行抗告を取り下げたため確定し、本件命令が第三債務者である遠賀信用金庫に送達された平成七年一〇月六日にさかのぼって効力を生じたことになる(なお、前記各強制執行停止決定がいつ執行裁判所に提出されたかは明らかではないが、仮に、その提出後に本件命令が発せられたとしても、右のとおり本件命令は執行抗告によって取り消されることなく確定したのであるから、その効力に瑕疵はない。)。

そうすると、本件命令の被差押債権であったAないしC各債権に係る前記第二、一3(二)で判示した預託金返還請求権は、本件命令の効力発生時である平成七年一〇月六日の時点において、本件命令の請求債権額(AないしC各債権の元利金合計額)の限度で日建工業に転付され、この範囲で、日建工業の控訴人に対するAないしC各債権は消滅したことになる。

そして、本件命令の請求債権額は前記第二、一3(二)で認定したとおりであるが、同(六)で判示したAないしC各債権の残元本額を前提とし、請求債権における損害金(利息)の終期である平成七年一〇月二日までのAないしC各債権及び本件命令(債権差押分も含む。)に係る執行費用の総合計額を計算すると、別紙計算書<1>のとおり一億四三一二万八三〇七円となるところ、これは、右預託金返還請求権一億四五八五万五〇〇〇円よりも少ない額であるから、同預託金返還請求権をもって、AないしC各債権(及び執行費用)はその請求債権額の限度で転付され、消滅したことになる。

しかし、本件命令の請求債権における損害金(利息)の終期より後の、同月三日から本件命令が効力を生じた同月六日までの四日間に生じた損害金(利息)については、本件命令(及びその前提となる差押命令を含む。)の対象外ということになるから、本件差押え1はその限度において効力を有することになり、被控訴人のAないしC各債権の差押えに基づく取立権の行使もその限度で理由がある。

そこで、AないしC各債権の右四日分の損害金(利息)の額を算出すると、別紙計算書<2>のとおり合計九万二七一八円となる。

2  よって、被控訴人の控訴人に対する本件差押え1による取立権の行使は、その被差押債権であるAないしC各債権の損害金(利息)九万二七一八円の支払を求める限度で理由がある。

二  争点2について

1  前記第二、一4(三)ないし(五)で認定したとおり、本件差押転付命令2は平成一〇年一二月一四日に発令され、同命令は、同月一六日に第三債務者である国に、同月一八日に債務者である控訴人にそれぞれ送達されたのであり、同命令は同月二六日に確定したこと、他方、本件差押え2は同月二二日発令され、同命令は、同月二五日第三債務者である控訴人に、平成一一年一月一六日に債務者である日建工業にそれぞれ送達されたのであるから、争点1において判示したとおり、本件差押転付命令2が確定すれば、その効力は、同命令が第三債務者である国に送達された平成一〇年一二月一六日に遡及するから、その後に債務者である日建工業に送達された本件差押え2は効力を生じないことになる。

そして、本件差押転付命令2の請求債権は、前記第二、一4(三)で認定したとおりD債権の元本及びそれに対する平成九年九月二日から平成一〇年一二月一〇日までの損害金の合計二一五二万八七六七円であるから、被差押債権である当該供託金取戻請求権二二七〇万円の一部が転付し、D債権は右請求債権額の限度で消滅したものと解される。

しかし、本件差押転付命令2の請求債権における損害金の終期より後の同月一一日から同命令の効力が生じた同月一六日までの六日間に生じた損害金については、同命令の対象外ということになるから、本件差押え2はその限度で効力を有することになり、被控訴人のD債権の差押に基づく取立権の行使もその限度で理由がある。

そこで、D債権の右六日間の損害金の額を算出すると、別紙計算書<3>のとおり一万九七二六円となる。

なお、D債権の元金が右のとおり消滅した以上、前記第二、一4(六)及び(七)で認定した債権仮差押えも仮差押えの対象となる権利が存在しないことになる。

2  よって、被控訴人の控訴人に対する本件差押え2による取立権の行使は、その被差押債権であるD債権の損害金一万九七二六円の支払を求める限度で理由がある。

第四よって、被控訴人の本件各請求は、合計一一万二四四四円の支払を求める限度で理由があるが、その余はいずれも理由がないから棄却すべきところ、これと異なり右の限度を超えて本件各請求の各一部を認容した原判決は、右の限度内において正当であるが、右の限度を超えた部分は不当であるから、原判決を主文第一項のとおり変更し、訴訟費用の負担につき民訴法六七条二項本文、六一条、六四条を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉原耕平 裁判官 石村太郎 裁判官 高野裕)

別紙計算書<省略>

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